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為替介入は、いくら使われてきたか
——財務省の帳簿三十五年分を、年表として読む夜

円買い42日と円売り338日 / 2026年の27兆円 / 協調介入と、ベッセント長官の言葉 / 金利差・マネタリーベース・物価・住宅ローン・財政・原油 / 突然来る材料への確認手順

財務省は、為替介入をした日と金額を、1991年4月分から一枚のCSVにして公開している。私はそれを紙に刷って、年表の横に置いて読む。この文章はその夜の覚え書きだ。書庫も縮刷版もランプも、書き手の設定であって実在しない。だが数字はすべて、財務省・日本銀行・米財務省・FRBの公表資料と、日付の分かる報道から写した。円がいま何円かを当てる文章ではない。三十五年ぶんの帳簿を数え、今年の夏に何が起き、何が円を動かし、次に何が突然やって来うるかを並べ、最後に読者が自分の口座で確認できる項目へ降ろす。

夜の書庫で、積み上げた年表と開いた帳簿をランプの灯りで読む机を描いた線画イラスト

帳簿は、三十五年ぶんある

財務省の統計名は「外国為替平衡操作の実施状況」という。介入した総額を月に一度、実施日・金額・売買通貨の内訳を四半期に一度、公表する仕組みだ。統計の趣旨文は、為替相場は基本的に各国のファンダメンタルズと市場の需給で決まるとしたうえで、「短期間のうちに大きく変動する等、不安定な動きを示すことは好ましくない」から、相場の安定を目的に通貨当局が売買することがある、と説明している。介入の理由は、いつも「水準」ではなく「動き」の側に置かれる。ここは後で戻ってくる。

全データのCSVには、データ期間「平成3年4月~」、単位「億円」とある。最初の一行は1991年5月13日、139億円、米ドル売り・日本円買い。私はこの一行を読むたびに、当時の139億円が今の帳簿の中でどれほど小さく見えるかに、少し立ち止まる。

全行を足すと、2026年6月期までに円を相手にした介入は380日(ほかに1991年の独マルク買いが1日、1997年のインドネシアルピア買いが5日ある)。円を売った日が338日、円を買った日が42日。金額にすると、円売りが約81兆円、円買いが約41兆円である(編集部が日別行を加算した値で、各日は四捨五入されているため期計と1億円単位の差が出る)。三十五年の大半、この国は円を「売る」側に立っていた。1993年から96年、99年から2004年、そして2010年から11年。ことに2003年1月から2004年3月までの十五か月には、四半期計を足して35兆2,564億円を円売りに使っている。円を「買った」年は、1991〜92年、1997〜98年、2022年、2024年、そして2026年。買う側の帳簿は、6月期までで、たった42日ぶんしかない。

実施日金額(四半期計・億円)
1998年4月9日・4月10日・6月17日30,470
2022年9月22日/10月21日・10月24日28,382/63,499
2024年4月29日・5月1日/7月11日・7月12日97,885/55,348
2026年(4〜6月期)4月30日・5月4日・5月6日117,349
2026年(7月30日〜8月26日)月次公表のため実施日は未公表(11月に日次公表予定)153,993

出典:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」全データCSV・四半期公表・月次公表(参照 2026-09-05)。7月30日〜8月26日分は月次の総額のみで、売買通貨は財務省の公表にはまだ書かれていない。時事通信と日本経済新聞は円買い・ドル売りとしている。

単日で最も大きい介入は、2011年10月31日の8兆722億円だった。円売りである。円買いで最も大きいのは2026年4月30日の6兆2,787億円、次いで2024年4月29日の5兆9,185億円、2022年10月21日の5兆6,202億円、2026年5月6日の4兆6,759億円。上位の日付がここ数年に固まっているのは、円買いの時代が「大きく、まとめて」使う時代でもあることを示している。

2026年の夏を、一行ずつ

4月30日、6兆2,787億円。5月4日、7,802億円。5月6日、4兆6,759億円。四半期計11兆7,349億円。大和総研のレポートは、比較的円の取引が少ない平日の夕方から夜や、休日に介入が行われた模様だと書いている。楽天証券トウシルは、4月30日の介入でドル円が160円台から155円台へ動いたと記した。

7月23日、ドル円は一時163.988円。外為どっとコムは1986年11月以来およそ40年ぶりの円安水準と書き、時事通信は「164円に迫り、約39年8カ月ぶり」と書いた。日本銀行が公表する東京市場のスポットは、同日17時に163.31〜32円、東京時間のレンジ高値は163.42円である。海外時間の高値と東京のレンジは別の物差しなので、私は年表の同じ行に、出典を分けて二つ書く。

7月30日の夜、円は162円台後半から一時157円台へ、5円近く急騰した(時事)。7月31日、米国東部時間。財務省は8月3日の財務大臣談話で、この日に「米国財務省と協調して円買い介入を実施した」と発表した。談話は、2025年9月の日米財務大臣共同声明に基づき、円の「過度な変動や無秩序な動き」に対処したものだとし、「今後、更なる協調介入を実施することも躊躇しない」と結んでいる。日本が将来FRBのFIMAレポ・ファシリティを使う予定だとも書いた。外国の当局がニューヨーク連銀に預けた米国債を担保に、必要なときドルを借りる常設の仕組みである。米国債を売らずにドルを用意できる、という含意である。

片山財務大臣は翌8月4日の会見で、日米の円買い介入は「28年ぶり」であり、日米が「おのおの同時刻に発表」したと述べた。介入の効果を問われると、「特にお答えすることはできません」。米側の額は公表されていない。CNBCはFTの報道として、ニューヨーク連銀がユーロを売って円を買ったと伝え、ロイターが撮ったベッセント長官のメモ帳の写真に「Buy Japanese Yen (JPY) $5-10 bil.」の文字があったことも書いた。私はこの写真の記事を刷って、年表の7月31日の余白に貼った。三十五年の帳簿に、相手方の手書きのメモが残る日はそう多くない。

8月3日の東京市場で、ドル円は一時155.218円(外為どっとコム)。日銀のレンジは155.20〜157.86円。そして8月28日、財務省は7月30日から8月26日までの介入額を15兆3,993億円と公表した。4〜6月期と合わせ、2026年の暦年合計は27兆1,342億円になる。1991年4月以降の公表データで、暦年の合計としては最大だ。これまでの最大は2003年の20兆4,250億円で、それは円売りだった。円買いに限れば2024年の15兆3,233億円が最大だったから、今年はそれを一年の途中で、1.8倍近くにした。

原資のほうも見ておく。外貨準備高は3月末の1兆3,747億ドルから、5月末には1兆3,059億ドル(4月末比771億ドル減)、6月末1兆2,875億ドル、7月末1兆2,871億ドルへ動いた。7月末の内訳は証券9,273億ドル、預金1,623億ドル、金1,095億ドル。円買い介入は外為特会の外貨資産を売って行うので使える残高という制約がある、と外為どっとコムの解説は書く。8月末の数字は、この原稿の時点ではまだ出ていない。

効いたのか——8月27日の159円、8月31日の160円

ここで年表を一か月飛ばす。8月27日、日銀公表の17時スポットは159.35〜36円。8月31日、9時に160.11〜12円、東京時間のレンジ高値は160.19円。27兆円を使った夏の終わりに、円は介入前の水準へ戻りかけていた。日経は8月28日の記事の冒頭で「介入は「時間稼ぎ」との見方が多い」と書き、NRIの木内登英氏は8月3日の時点で「為替市場への介入には一時的な効果しかない」と書いていた。8月4日の会見で記者は、拡張的な財政が続く限り「バケツの底に穴が開いているようなもの」ではないかと大臣に問うている。

帳簿を遡ると、同じ形は前にもある。2022年は9月22日に2兆8,382億円を使い、一か月後の10月21日に5兆6,202億円、24日に7,296億円を重ねた。2024年は4月29日と5月1日に計9兆7,885億円、その二か月半後の7月11日と12日に計5兆5,348億円。円を買った年で一度の介入で済んだ年は、この帳簿にはない。介入は水準を決める道具ではなく、財務省の趣旨文が言うとおり「動き」を鈍らせる道具で、動きの向きを決めるのは別のものだ。この夏はそれが、はっきり見えた。

動かしたのは、金ではなく言葉だった

8月30日、日曜日。米財務省の公表文によれば、ベッセント長官はノースカロライナ州アッシュビルのG20の場で植田総裁と会い、「円の大幅な過小評価に対処するための、日本の断固とした市場・金融政策上の措置」への強い支持を表明し、円安が日本の国内インフレ圧力の一因になっていると指摘した。原文は "expressed strong support for Japan’s decisive market and monetary steps to address the substantial undervaluation of the yen" である。同じ日のロイターのインタビューで長官は、円の最近の動きは "pretty well contained"(かなりよく抑え込まれている)で無秩序ではないと述べ、植田総裁は "do the right thing" をするだろうと言い、何をすべきかは言わないとしつつ、"we probably reached the end of Abenomics, which was a reflationary program" とも語った。ロイターは、円が前週金曜日に160円を割り込んでいたことも書いている。

翌8月31日、長官はCNBCに "I have information that the market doesn't have, and it's my belief that the Japanese government and the BOJ will do the things that will lead to a stronger yen" と語り、それは利上げを意味するのかと問われて "I think the market's pricing that in now" と答えた。この日のドルは159.73円だったとロイターは記す。9月1日のG20閉幕会見では、記者会見の書き起こしによれば "We’ve talked to the Japanese, and I’ve said they had a tremendous success in Abenomics — now they should actually let that run and stop the reflation." と述べ、これからは「Takaichinomics」の時代だとした。同じ発言は、9月4日の財務省の会見で記者が英文で読み上げてもいる(語句の細部は書き起こしと少し違う)。片山大臣の答えは、中央銀行の政策についての要求は「一切ない」、一方的な政策要求はしていないという点で「両省は一致しております」だった。

そして9月3日。日経によれば、円は一時155円台に上昇し、8月3日以来一か月ぶりの円高水準、一日の上げ幅は4円に達した。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏は翌日のレポートで、この動きの背景に並べたものを、私は年表にそのまま写した。ベッセント長官の8月30日の会談内容と8月31日のCNBC発言。片山財務相が8月31日に秩序だった円相場の重要性を確認したこと。植田総裁が9月1日に、利上げを次回を含め毎会合でしっかり議論したいと語ったこと。高田審議委員が9月2日に、利上げのペースと幅について機動的な対応が必要だと述べたこと。ブルームバーグがGPIFの経営委員会について報じたこと。9月4日、日銀の17時スポットは156.29〜30円、中心相場156.00円。

27兆円は円の「動き」を二度、鈍らせた。しかし向きを変えたのは、日曜日の会談要旨と、月曜日の一言と、それを受けて市場が織り込んだ「金利の見通し」のほうだった。介入の帳簿は、いつもそう読める。金は時間を買い、その時間のあいだに金利の話が変わらなければ、値段は戻る。 ——年表の余白に、私が書いた一行

依頼をくれた人の言葉を借りれば、「介入しても利かなかったのに、ベッセント発言で反転した」。私の帳簿では、半分がそのとおりで、半分が違う。介入は164円手前を155円台まで押し戻し、その効き目が一か月で薄れて160円に戻り、そこから言葉と金利観測が155円台へ運んだ。どちらも本当で、順番があるだけだ。

金利差という、原因のほう

ベッセント長官は「原因の一つとして金利差の問題がある」と前から言っている人だ、と片山大臣は9月4日の会見で述べている。だから原因のほうの帳簿も開く。

日本銀行は7月31日の決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を「1.0%程度で推移するよう促す」方針を賛成8・反対1で決めた。反対した高田委員は1.25%への引き上げを提案し、否決された。高田委員は9月2日の札幌での挨拶で、今年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げたと振り返り、あくまで私見と断ったうえで、2024〜25年の「年2回の利上げの緩やかなペース」から、2026年以降は「一定のペースに囚われず機動的に利上げ」する局面だと述べた。次の決定会合は9月17日・18日である。

太平洋の向こう側の帳簿も開く。FOMCは7月29日、フェデラルファンド金利の目標レンジを3.50〜3.75%に維持することを9対3で決めた。反対した3人(Hammack、Kashkari、Logan)は0.25ポイントの利上げを主張している。据え置きの声明に「利上げ」の反対票が三つ並ぶのは、私の年表では見慣れない配置で、三人の名前の横に赤鉛筆で小さく印を付けた。声明は、インフレが2%目標に対して高止まりしており、エネルギーを含む供給ショックが一因だと書く。次のFOMCは9月15日・16日。議長は Kevin Warsh である。

市場の金利も写す。日本の10年国債金利は、2024年1月4日に0.649%、2025年9月1日に1.633%、2026年1月5日に2.111%、7月31日に2.801%、8月31日に2.943%。米国債10年は9月4日に4.78%。差は縮んでいる。それでも米財務省の7月の為替報告書は、円が対ドル・実質実効ともに数十年ぶりの低水準にあると記し、"substantial yen undervaluation" と書いた。同じ報告書は、日本が報告期間中に介入せず、月次総額と四半期の日次詳細を公表する点で「例外的に透明」だとも評している。日本を含む10経済は監視リストに置かれた。

量の帳簿もある。日銀のマネタリーベースは2026年8月、平均残高543兆70億円、前年同月比マイナス15.7%。日銀当座預金はマイナス18.9%。かつて年表の何頁分も膨らんだ数字が、いま二桁で縮んでいる。円の量が減り、金利が上がり、それでも円は買われなかった。金利差だけで説明のつく話ではないと、この帳簿は言っている。

物価と、住宅ローンの窓口

総務省統計局の消費者物価指数(2025年基準・全国)は、2026年7月分で総合が前年同月比1.9%の上昇、生鮮食品を除く総合が1.8%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が1.9%。日銀の7月の展望レポートで政策委員見通しの中央値は、除く生鮮食品で2026年度+2.5%(4月時点は+2.8%)、2027年度+2.4%、2028年度+2.0%。米財務省の会談要旨が「円安が国内インフレ圧力の一因」と書いた、その物価である。跳ねているとも収まったとも書かず、数字のまま置く。

住宅ローンの窓口には、二つの金利が並んでいる。ひとつは短期プライムレート。日銀の統計で主要行の最頻値は、2009年1月13日から長く1.475%だった。表のその十五年ぶんは同じ数字が縦に並ぶだけで、私は指でその余白をたどる。それが2024年9月2日に1.625%、2025年3月17日に1.875%、2026年2月9日に2.125%、2026年8月3日に2.375%。金融広報中央委員会の「知るぽると」は、銀行などの取扱商品を「短期プライムレート連動の変動型金利」と書き、変動金利型の適用金利は「短期(または長期)プライムレートに連動して随時変更され」、すでに借りた人は毎年4月と10月時点の水準で改定されると説明している。もうひとつは長期固定。住宅金融支援機構の【フラット35】(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)は、2026年9月の借入金利が年3.460〜5.690%、最も多い金利は年3.460%である。同じ「知るぽると」は【フラット35】を「長期国債金利などの水準を考慮した全期間固定金利型」と位置づけている。

私は「見通し」を書かない。書けるのは、政策金利が1.0%にあり、審議委員の一人が「機動的な利上げ」と言い、市場は9月の利上げを織り込んでいると米財務長官が語り、10年国債が2.9%台にあるという、いまの配置だけだ。変動で借りている人はこの配置の「短期」側に、固定で借りようとしている人は「長期」側に、それぞれ自分の返済表を重ねればよい。

帳簿のもう一枚——財政

財務省が四半期ごとに出す「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」は、2026年6月末で国債及び借入金の合計が1,346兆6,833億円。うち普通国債が1,110兆8,839億円、政府短期証券が94兆3,994億円。次の公表(9月末分)は11月10日である。9月4日の会見で片山大臣は、2027年度予算の一般会計概算要求額が約143.1兆円になったと述べた。補正予算への依存から脱却し、恒常的な施策を当初予算で措置する方針の初年度だという。

政治の頁も一枚。2026年2月8日の衆院選で、自民党と日本維新の会の与党は合計352議席を得た。翌日の会見で高市総裁は「高市政権で進める政策転換の本丸は、責任ある積極財政です」と述べ、同時に、参議院で与党が過半数を持たない状況は変わらないとも述べている。8月28日、円が160円に迫るなかで日本の債務への市場の懸念を問われた片山大臣は、ベッセント長官との共同声明は「今この瞬間も続いております」とし、供給力を強化して潜在成長率を引き上げれば「結果として当然円の信認は向上する」と答えた。9月4日には、ベッセント長官から財政の持続可能性が重要だと話があったのではないかという記者の問いに、要求を受けたことも問い詰められたことも「全くない」と答えている。

財政の是非は、この帳簿の外にある。年表に書き写すのは、8月4日の会見で記者が口にした「バケツの底」という比喩と、同じ会見で介入の効果を問われた大臣が「特にお答えすることはできません」と返した事実だけだ。ベッセント長官の "stop the reflation" と、片山大臣の「要求は一切ない」も、同じ頁に、二つとも置く。どちらが正しいかを私が決めるのではなく、次の国債の入札と、次の為替報告書が、いずれ決める。

石油の匂い——ホルムズと、ロシアの製油所

2026年2月28日以降、米国とイスラエルはイランおよびその同盟勢力と戦争状態にある(英語版Wikipediaの記述)。ホルムズ海峡の危機は同じ日から続き、IEAはこれを世界の石油市場の歴史で最大の供給の混乱と評した、と伝えられる。EIAの日次スポット価格で欧州ブレントを追うと、2月27日に71.32ドルだったものが、4月7日に138.21ドルの今年の高値をつけ、7月2日には68.53ドルまで下げ、7月23日に105.32ドルへ戻し、9月1日は96.02ドル。WTIは4月7日に114.58ドル、9月1日に91.48ドルである。7月8日には米国とイランの暫定的な休戦がイランの商船攻撃で崩れ(Wikipedia)、9月1日から2日にかけては米中央軍がイランの防空・通信・レーダー施設を攻撃したと発表し、イランはヨルダンとバーレーンへ向けて攻撃し、ヨルダン軍は13発のミサイルのうち10発を迎撃したとしている(CNBC)。ベッセント長官はFox Businessに、ホルムズ海峡は2年以内に "worthless piece of water" になると語った。

EIAが8月11日に出した短期エネルギー見通しは、ホルムズの通航制約が8月まで続くと仮定して、ブレントは2026年第3四半期に平均およそ85ドル、在庫が戻る2027年には平均69ドルへ徐々に下がると見ている。仮定の上に立つ見通しであり、次の公表は9月9日だ。

もう一つの産油国。AP通信は8月20日、ウクライナによるロシアの製油所や石油インフラへの攻撃でこの夏の初めにロシアで燃料危機が起き、ガソリン不足が全土に広がったと報じた。戦争が始まって4年以上が経つ。

円の帳簿との関係を、私はこう読む。原油の値段はドルで立ち、日本はそれを輸入で買う側にいる。7月23日、ブレントが105ドルへ戻した日が、ドル円が164円に迫った日と重なるのは偶然ではないだろう、と書きたくなるところで、私は鉛筆を止める。同じ日付が並ぶことと、一方が他方を動かしたことは別だ。年表は日付を並べるだけで、因果は読者が自分の口座の損益表で確かめるものだと思っている。

突然やって来るもの——付箋を貼った日付

年表の先の頁に、私が付箋を貼っている日付を並べる。どれも公表側が予定として出しているもので、変更されることがある。

  • 9月9日:EIA 短期エネルギー見通し(次回公表)。ホルムズの仮定が変わるかどうか。
  • 9月15日・16日:FOMC。7月は据え置きに利上げの反対票が3票あった。
  • 9月17日・18日:日銀の金融政策決定会合。米財務長官は「市場は利上げを織り込んでいる」と述べ、審議委員の一人は「機動的な利上げ」と語った。織り込みが外れる側にも、上回る側にも、突然はある。
  • 9月30日 19時:財務省の介入実績(8月27日〜9月28日分)の月次公表。8月27日以降に介入があったかどうかが、数字で確定する。
  • 10月27日・28日:FOMC。10月29日・30日:日銀。10月30日 19時:介入実績の月次公表。
  • 11月2日〜9日:介入実績の日次公表(7〜9月分)。7月30日・31日・8月3日前後に、どの日いくら使ったかが分かる。
  • 11月3日:米国の中間選挙(予定)。
  • 11月10日:国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(9月末分)。
  • 12月8日・9日:FOMC。12月17日・18日:日銀。

日付のない付箋もある。ホルムズ海峡で次にタンカーが攻撃される日。「更なる協調介入を実施することも躊躇しない」という談話の、二度目が実行される夜。8月末の外貨準備高の公表。米財務省の次の為替報告書(半年ごとで、直近は2026年7月)。日本の長期金利が3%の上に定着する日(財務省の国債金利情報で10年物は9月2日に3.006%を付け、翌3日は2.966%。G20の会見でも記者が、会期中に「3%に達した」と長官に問いかけている)。そして、この文章を書いている私が思いつかない何か。帳簿の三十五年で、一番大きな介入の日は、たいてい前の日には誰も知らなかった日だ。

今日の読者が確認できる項目

年表を閉じる前に、読者が自分の手で確かめられる項目へ降ろす。ここは私の役目で、いつも同じ順番だ。

  1. レバレッジと、証拠金維持率の線。この夏、ドル円は7月30日の夜に5円近く、7月23日から8月3日までの数営業日で約9円動いた。同じ幅が自分のポジションに来たとき、維持率は何%になり、どこで強制決済されるか。計算式は各社の取引要綱にある。制度の側はレバレッジ規制と証拠金の仕組みにまとめてある。
  2. ロスカットと追証の条件。ロスカットが発動する維持率、追証の判定時刻、判定から入金までの猶予。各社で違う。約款を先に読む。
  3. 急変時のスプレッド拡大。介入や要人発言の直後は「原則固定」の例外条件が動く。どの条件で拡大しうるかは、各社が公式ページに書いている。スプレッド比較——「原則固定」の実態に、読み方を置いた。
  4. 時間帯と休日。今年の介入は、大和総研が書くように夕方から夜と休日に、協調介入は米国東部時間の金曜日に行われた。週末や連休をまたいで持つポジションは、東京の取引時間の外で値が飛ぶ前提で見る。
  5. 出金と、登録の有無。国内の登録業者か、信託保全はどうか、出金は通常何日か。金融庁の登録一覧は 金融庁 で確認できる。
  6. 一次資料を、自分で開く。介入の額は財務省の実施状況ページに、公表予定の日時とともに出ている。次回は9月30日19時。カレンダーに入れておけば、報道より先に数字を見られる。
補足:本記事の書庫・縮刷版・年表・付箋の情景は書き手の設定であり、実在しません。数値・発言はすべて本文中に示した公表資料と報道の参照時点(2026年9月5日)のもので、相場の先行きや売買の方向を示唆するものではありません。相場は予告なく急変し、預託した証拠金を上回る損失が生じることがあります。

下記は広告(PR)です。本文の論評とは切り分けてご覧ください。口座の条件・ロスカットの水準・スプレッド拡大の条件は、各社の公式ページでご確認ください。

参照した一次資料

  1. 財務省「外国為替平衡操作の実施状況」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/feio/index.html(全データCSV・四半期公表〔令和8年4〜6月〕・月次公表〔令和8年7月30日〜8月26日〕を含む)
  2. 財務省「片山財務大臣談話(令和8年8月3日)」 https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20260803072806.html
  3. 財務省「日米財務大臣共同声明(仮訳)」2025年9月11日 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/dialogue/PR_US-Japan_FM_JointStmt_jp.pdf
  4. 財務省 大臣記者会見の概要(令和8年8月4日・8月28日・9月4日) https://www.mof.go.jp/public_relations/conference/index.html
  5. 財務省「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和8年6月末現在)」 https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202606.html/「外貨準備等の状況(令和8年7月末現在)」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0807.html/国債金利情報 https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm
  6. 米財務省 READOUT(2026年8月30日) https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0619/為替報告書(2026年7月) https://home.treasury.gov/system/files/206/July-2026-FX-Report.pdf
  7. 日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年7月31日) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260731a.pdf/マネタリーベース https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/外国為替市況 https://www.boj.or.jp/statistics/market/forex/fxdaily/index.htm/金融政策決定会合の運営 https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm/高田審議委員挨拶(2026年9月2日) https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2026/ko260902a.htm/経済・物価情勢の展望(2026年7月) https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2607b.pdf/長・短期プライムレートの推移 https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
  8. FRB Press Release(2026年7月29日) https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20260729a.htm/FOMC 日程 https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm/FIMA レポ・ファシリティ(2021年7月28日) https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210728b.htm
  9. 総務省統計局 消費者物価指数(2026年7月分) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html/住宅金融支援機構【フラット35】金利情報 https://www.flat35.com/kinri/index.php/rates/top/金融広報中央委員会「知るぽると」金利タイプの違い https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/hyakka/part2/jutaku_loan/jutaku_loan005.html
  10. EIA Short-Term Energy Outlook(2026年8月11日) https://www.eia.gov/outlooks/steo//Brent 日次スポット https://www.eia.gov/dnav/pet/hist/RBRTED.htm
  11. 自由民主党「衆院選の結果を受けて 高市早苗総裁会見」(2026年2月9日) https://www.jimin.jp/news/press/212395.html

報道の引用元:時事ドットコム(2026年8月28日)、日本経済新聞(2026年8月28日・9月3日、会員限定記事の冒頭)、Reuters(Yahoo Finance 掲載・8月30日・31日)、CNBC(8月1日・9月2日)、外為どっとコム マネ育チャンネル(8月5日)、NRI 木内登英(8月3日)、野村證券ウェルスタイル(8月3日)、大和総研(7月3日)、三井住友DSアセットマネジメント 市川レポート(9月4日)、AP通信(Yahoo!ニュース掲載・8月20日)、G20閉幕会見の書き起こし(singjupost)、英語版Wikipedia(2026 Iran war ほか)。

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